nobatam011203 「地方自治論」レポート
『行政とテーマパークの連携とそれが市民に与える影響』 k000140野畑三佳
はじめに
普段生活している中で、行政の果たす役割は大きいにも関わらず、私たちが行政について考える機会は少ないといえるであろう。その理由は、行政というテーマは大きく漠然としていて身近な問題として捉えにくいからではないだろうか。そこで私は、市民にとって身近な存在を通して行政について考察してみようと考えた。その候補として考えたものがテーマパークである。中でも私自身何度も訪れた経験があり、身近な存在だと感じている、「ハウステンボス」を中心として焦点をあててみることにした。
序章 テーマパークの定義
テーマパークとは、その言葉の通り、「あるテーマに基づいて構成、空間演出がなされたレジャー施設」と定義されるが、(財)自由時間デザイン協会(旧余暇開発センター)の井手信雄氏によると、テーマパークは、次のように類型化することができる。つまり、テーマパークの人気とは、非日常的な空間が楽しめるエンターテインメント性にあり、このためエンターテイメント・パークが狭義の意味でのテーマパークとされるが、それ以外に、例えば博物館、観光牧場、レジャープール、ゲームセンター等の、既存レジャー施設が進化した形として、ミュージアム・パーク、ファーム・パーク、ウォーター・パーク、ゲーム・パーク等と呼ばれるテーマパーク的施設も含めて、広義の意味でのテーマパークと理解されている。(http://www.gpc.pref.gifu.jp/cyousa/keikyou/h12/07_09/park.pdfより引用)
第一章 ハウステンボスの事例
長崎県佐世保市ハウステンボス町。日本を代表するテーマパークの一つであるハウステンボスが一つの町を形成していると言う事実は、案外知られていないのではないだろうか。
以下をハウステンボスのホームページより引用する。「佐世保市は、長い間造船と軍港の町として栄え、またそのように認知されてきた。1992年3月25日、その佐世保市にハウステンボスが開業し、いまそのイメージが塗り替えられつつある。ハウステンボスは、長崎県、佐世保市、そしてオランダ村のある西彼町の三つの地方自治体が株主として参画する第三セクター方式をとっている。第三セクターとは、自治体(第一セクター)と民間企業(第二セクター) が共同出資して設立する半官半民の企業のことである。経営や実際の運営は民間のハウステンボス株式会社経営や実際の運営は民間のハウステンボス株式会社が行うが、建設地購入、道路建設、雇用調整など様々な場面で、これら地方自治体の協力が欠かせない事業であった。特に道路整備はハウステンボスのみならず、地域住民の生活圏拡大にとっても大きなプラスとなっている。そして現在も、観光客誘致、あるいは施設の整備といった面で、互いに協力し合う関係が続いている。(http://www.huistenbosch.co.jp/about/gaiyou/boss/index_4.html)ハウステンボスは、一民間企業がひとつの街を経営するという、かつてない実験に取り組むプロジェクトである。その経営の柱として観光事業があり、街づくりと観光を組み合わせた新しい事業形態といえる。開業から十五年後には、ここは入場料を取らない本当の街として解放することを考えており、その時には環境インフラや美術館などは行政に移管されることになるだろう。(http://www.huistenbosch.co.jp/about/gaiyou/boss/index 5.html)」つまり、ハウステンボスは単なるテーマパークでなく、行政と連携し地域と共に歩んでいく新たなタイプのテーマパークであるといえるのである。
第二章
その他のテーマパークの事例
当然ながら日本にはハウステンボス以外にもたくさんのテーマパークが存在する。そこで次に、ハウステンボス以外のテーマパークについての事例を見てみよう。
まずは、大阪に今年三月に開業したばかりの大型テーマパーク「ユニバーサルスタジオ・ジャパン(USJ)」についてである。「USJは大阪市此花区の臨海工業地帯に建設され、面積は甲子園球場の約十四倍の五十四ヘクタール。 総事業費千七百億円をかけ、十八のアトラクションと四十五の物販・飲食施設で構成する。事業主体は日米合弁企業、ユー・エス・ジェイ。大阪市二五%、米ユニバーサルグループ二四%、その他民間企業が出資する第三セクター会社だ。」(http://www.sankei.co.jp/mov/db/200102/0220usj_a.htmlより引用)次に、三重県の「志摩スペイン村」である。「志摩スペイン村は、筆頭株主の近鉄や東京三菱銀行、地元企業などのほか、三重県と磯部町が出資している第三セクターで、1994年に開業したテーマパークである。」(時事通信社 2001年 3月 3日 より引用)この他にも、経営破たんで一躍脚光を浴びた宮崎県の「宮崎シーガイア」や、岡山県の「倉敷チボリ公園」なども第三セクター方式を採用したテーマパークである。以上のように、普段訪れる場合には気付かないようなテーマパークも行政と連携していることが分かった。
第四章 問題点
行政とテーマパークが連携することによるメリットがある反面、多くのデメリットが存在することも事実である。日本のテーマパークの大多数は第三セクター方式を採用しているのであるが、ほとんどのテーマパークが、計画構想時の過大評価や景気の波に煽られ、厳しい経営状況下にある。ここで、第三セクター方式の抱える問題点を挙げる。「当初は、官の公益性と民の効率性の結合として、官庁方式の拘束から離れ、弾力的・機動的・効率的な経営を行うことができる事業形態であると強調された。しかし、実際の運営においては官が主体となり、行政の硬直的な意思決定や予算会計制度、事務処理などの影響を強く受け、人、情報などの面でも官に依存する側面を強く持っていた。このことが、逆に民間側の官依存を強め、官へのリスク転嫁を進める構造をつくり出したのである。共同出資者の自治体と民間企業は、その行動原理において「公益性」と「効率性」という根本的な違いがある。にもかかわらず、それを踏まえて両者の関与する領域に対して明確な線引きなしに事業を進めたことが、官民双方の抱える問題をより一層根深いものとする結果を生み出している。第三セクターについては首長や議会の権限と責任が不明確であり、また情報の開示とチェック機能が充分でないことが指摘できる。そこで、官の公益性と民の効率性の結合という当初のねらいを実現するために、自治体の行政責任や出資のあり方、あるいは派遣職員の身分等に関する法制度を含めた環境整備に努めて行かなければならない。」(http://research.php.co.jp/report/98-7-2.htmlより引用)
最終章 行政とテーマパークの連携が市民に与える影響
最後に、この章では行政とテーマパークが連携した際に市民に与える影響を考察してみよう。まず、行政が市民に与える影響は、条例や税金など生活の細部にまで至ることは周知の事実である。またテーマパークは市民に対して、余暇休息や観光としての場の提供、雇用機会の創出をしたりする。では、行政とテーマパークが連携した際には市民にはどのような影響が及ぶのであろうか。考えられるメリットとしては、観光産業の活性化と共に市民、あるいは地域にまで潤いがもたらされる。また、デメリットとしては、テーマパークの経営不振を補填するための増税を課せられたり、大事業になることが予想されるため騒音などの公害に巻き込まれるなどの可能性がある。
おわりに
私は自身の関心のあるトピックとして、軽い気持ちでテーマパークを選んでみた。しかし、調べてみると、テーマパークという一つのトピックからでも、行政、経済、景気、第三セクターなどの問題へと無限の広がりをみせるのだということを実感した。確かにどのような問題でも、他のことから切り離して考察することはできない。そのような当然といえるべきことを再確認することができた。また、行政という大きなテーマでも、身近な事柄から考察することが可能なのだと分かり、自分にとって行政が少し身近になったような気がした。
<参照サイト>
・ハウステンボス公式ホームページ (http://www.huistenbosch.co.jp/)
ハウステンボスに関する情報ならば、ほとんどのことはこのHP上で検索可能。ハウステンボスに興味のある人は、一度覗いてみる価値あり!
・PHP政策研究レポート(http://research.php.co.jp/report/98-7.html)
PFI推進法案と第三セクターの問題点についての考察。とても参考になる。